不器用上司のアメとムチ


――夢を見た。


真っ白な景色の中であたしは久我さんを探していて、遠くにその背中を見つけて走っていた。


走って、走って……


そして追い付いた、と思って腕を掴むと、振り向いた顔は久我さんではなかった。



「――――おかえり、ヒメ」



それは何故か、笑顔の京介さんで……


そのまま彼の腕に抱き締められると、あたしの瞳から涙が流れた。


理由はわからない。


ただ、とてつもなく寂しくて、悲しくて……


京介さんの腕の中で、あたしはたくさん泣いた。


そして、景色はただの真っ白に戻った――――。



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