不器用上司のアメとムチ

彼女は生産統計課の、深山麻衣(みやままい)と名乗った。

背が小さくて、目がくりくりっと丸くて、ふわふわパーマのセミロングヘアが良く似合っていた。


「佐々木くんに、お昼にココに来るよう言って欲しいんです」


彼女に渡されたメモには、あたしも行ったことのあるカフェの名が書かれていた。

確か、会社から少し遠いけどケーキが美味しいお店。


「わかりました、伝えます。だけどあたし彼に無視されてるから、もしかしたら上手く伝わらないかも……」

「佐々木くんが、無視?」

「ええ、どうもあたし新人だから嫌われてるみたいで。」


冗談めかして言ったつもりだったのに、深山さんは急に眉をつり上げてあたしを睨んだ。


「佐々木くんは、そんな理由で人を無視したりしません!!」


……彼女のあまりの大声に、通りかかった社員たちが何事かと振り返る。


「あの……深山さん、落ち着いて」

「……っ!ごめんなさい、私ってば。あの、そろそろ仕事に戻らないといけないので、くれぐれもよろしくお願いします」


ぺこっと頭を下げて去っていった嵐のような彼女。

一体、佐々木のなんなんだろ……

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