不器用上司のアメとムチ
ちら、とこちらを見た佐々木と目が会う。
それを無視してあたしがパソコンに視線を落とすと、二人はまたコソコソと会話を続ける。
「それ、完全にまずいことしちゃってるじゃないですか……
記憶はなくても、妙にスッキリしてたとか身体でわかんないんですか?」
うるさい。
「俺もそう思ったんだが……どちらかというと悶々としてたんだよな……」
うるさい。
「うわ、じゃあ未遂で終わったとか!?」
うるさい、うるさーーい!!
あたしはバン!と両手で机を叩いて立ち上がった。
「二人とも、仕事中に下品な話はやめて下さい!」
呆気にとられる佐々木と久我さん。
今までこっちを無視していた森永さんと小出さんさえ、怪訝そうにあたしを見る。
あたしはその鬱陶しい視線から逃れるように、管理課を出て行った。
廊下をつかつかと歩いて、でも行く場所なんてトイレくらいしかなくて。
鍵をかけて個室にこもり、蓋の閉まった便器の上に座ってあたしは首をうなだれた。