不器用上司のアメとムチ

ちら、とこちらを見た佐々木と目が会う。

それを無視してあたしがパソコンに視線を落とすと、二人はまたコソコソと会話を続ける。


「それ、完全にまずいことしちゃってるじゃないですか……
記憶はなくても、妙にスッキリしてたとか身体でわかんないんですか?」


うるさい。


「俺もそう思ったんだが……どちらかというと悶々としてたんだよな……」


うるさい。


「うわ、じゃあ未遂で終わったとか!?」


うるさい、うるさーーい!!


あたしはバン!と両手で机を叩いて立ち上がった。


「二人とも、仕事中に下品な話はやめて下さい!」


呆気にとられる佐々木と久我さん。

今までこっちを無視していた森永さんと小出さんさえ、怪訝そうにあたしを見る。

あたしはその鬱陶しい視線から逃れるように、管理課を出て行った。


廊下をつかつかと歩いて、でも行く場所なんてトイレくらいしかなくて。


鍵をかけて個室にこもり、蓋の閉まった便器の上に座ってあたしは首をうなだれた。

< 80 / 249 >

この作品をシェア

pagetop