不器用上司のアメとムチ

「昨日ね、たまたま廊下で副社長に会ったの。それで、素敵だなぁっていつものように見とれていたら、なんと彼が私に話しかけてきたのよ!!」


興奮して、あたしの両手を握る小出さん。
あたしは少々引き気味に、話の続きを促す。


「何を話したんですか……?」

「それがね!あのキラキラ輝く瞳で私を見つめながら……

“僕のお姫様は元気でやっているかな?頭がちょっと足りないから迷惑をかけていると思うけど、どうか可愛がってやって欲しい。これは副社長命令だよ”

なーんて言うのよ!私もうクラクラしちゃって、一生分の幸せを使い果たしたと思ったわよ!だから私はあなたを可愛がることにしたの!副社長との約束なんですから……!」

「そ、そうなんですか……」


京介さん……あたしのこと「飽きた」って言って捨てたのに、なんで今さらあたしを気遣うようなこと……

一向にテンションの下がらない小出さんに握られた手をブンブン振り回されながら、あたしはそんな疑問に頭を支配されていた。

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