NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】
「なぁ、ナミダ。お前遠藤と付き合ってんの?」


「……いいや」


ニヤニヤしてやたら顔を覗き込んでくるクラスメートに、ナミダは小さく首を振った。


「えー、最近仲良さげじゃん」


「あ、俺もそう思う」


無愛想に二言三言交わすだけなのに、そんな親しげに見えるだろうか。


思ったことを素直に言うと、


「見える」


と即答された。


男女にちょっと接触があったら、すぐすっちの方に転換してしまうお年頃なんだよ、と一人が自分で言って自分で笑う。


「で、どうなの」


「だから違うって。全然違う」


そもそも、遠藤が女子であるという事実を、いま現実味を帯びて確認した。


遠藤がまとう空気は素っ気ない。


それはもう、ナミダに遠藤が女子であることを忘れさせるくらいに。


「遠藤は……友達」








「これ、ありがと」


「おう」


何回目かになるこのやりとり。


普通はこれで終了なのだがこの時は違った。


ナミダに本を手渡した後も、机の横に立っている遠藤に、ナミダは二度目の視線を向けた。


じっとナミダを見つめていた遠藤と目が合った。


あ、瞳の色、純黒、


と何故か今気づく。


「どうしたよ」


自分のことながら愛想のない声で尋ねると、遠藤は首を傾げながら口を開いた。


「君って、変わってる」


そう言い残して、背を向けた遠藤に、今度はナミダが首を傾げた。


(あんたのが変わってる……)


掴めない言動にクエスチョンマークを浮かべつつも、やっぱり声だけは女の子らしいのだなと、妙なところで感心した。
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