NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】
ナミダがあてがわれている部屋は狭い。


勉強机に本棚を置けば、もうそれだけでスペースの半分は埋まってしまう。


そこに布団を敷く間などあるはずもなく、ナミダの寝床は一人で寝始めた小学二年生の頃から仏間だ。


電気を消して、布団にくるまりしばらく経つと、目が暗闇になれて、祖父と母の遺影がぼんやりと浮かんでくる。


母の遺影はだいぶ色褪せているが、朗らかな笑みの可愛らしさは時の中に薄れることはない。


この人が、自分を産んだ人なのだと分かっていても、いまいちしっくりこない。


しかし写真の中の、永遠に年老いない若々しい顔は確かによくナミダに似ていた。


母というよりは、姉のようだとナミダは思う。


祖父の顔からは、厳格さのようなものが滲み出ているように見える。


父も、厳しい人だったと言っていた。


でも記憶の中の祖父は祖母同様、ナミダにはひたすら優しかった。


遺影に見守られて眠る習慣は、眠る前に二人を思う習慣をつくった。


そこには別に悲しみはなくて、ただ日々のまどろみの中に温かいような切ないような感情が混じるのだった。
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