NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】







「あの髪どうなってんの?全然かまってないよね」

「手入れする気ないならもっと切れよって感じ」

「表情動かないのかな。人形みたい」

「にんぎょー?そんなお綺麗なもんじゃないでしょ」


昼休み、ひとところに集まっているクラスの女子たちがくすくす笑っているのが聞こえた。


誰のことを話しているのかは明らかだ。


(せめて本人に聞こえないところで言えよ)


女子たちが集まっている席のすぐ後ろで、遠藤は本を読んでいた。


なるほど、どんなことを言われても眉一つ動かさず、本に没頭しているように見える。


他の女子たちとは明らかに異質。


これは煙たがられもするだろう。


遠藤はきっと、愛想笑いの仕方すら知らない。


しかし、本当に気にしていないのか。


遠藤の性格的に傷つくとまではいかずとも、腹は立ちそうなものだ。


(まぁ、庇う気もねぇけど)


まだこのクラスで過ごす時間の大半が残っているというのに、自ら女子に睨まれるような真似をする気はない。


「遠藤、それ面白いか」


だから、この時話しかけたのも、同情心からではなかった。


遠藤がそのとき読んでいたのは、ナミダが昨日貸した本だった。


遠藤はパタンと小さく音をたてて本を寝かせ、ナミダの方を向いて不思議そうに首をかしげた。


それはそうだろう。


本の貸し借りをするときと授業で必須の時以外こんな風に話しかけたことはないのだから。


「……変なの」


正直すぎる遠藤は純粋に感想を漏らした。


仲間内で楽しげに話していた女子たちがちらちらとこちらを見ているのが分かる。


何故か急な気恥ずかしさに襲われつつも、ナミダは遠藤にもう一度話しかけた。


「それ序盤すっごいゆるゆる始まるからちょいキツイけど、後半からはやばいから」


やばいとは便利な言葉だな、とか思いつつも遠藤の反応を伺う。


遠藤はしばらくじっとナミダを見つめていたが、ふっと頬を緩ませ、


笑みのようなものを浮かべた。


「知ってる。もうここまで読んだもん」


小さな唇から漏れる可愛らしい声に少し安堵する。


遠藤は前を向いてまた本を読み始めたので、ナミダもそれにならった。





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