NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】
心に波風
「ナミダ、これ、面白いよ。読んでみて」
隣の席から、ほい、とハードカバーの本を差し出される。
結構な厚さのある本で、手にとるとずっしりとした重みがあった。
「心理描写に容赦がないから結構きついけど、後味は良いの。」
「へぇ……つか、これ家から持ってきたのか?重かっただろ」
真夏の快晴を思わせる濃い水色の表紙を開きながら、ナミダは尋ねた。
「ううん、そうでもない」
ふーん、と返事をしながら、触り心地の良いページを撫でた。
「遠藤、これ、読んでみ」
凪人に気味悪がられるくらいきれいに整理されたカバンの中から、薄い文庫本を差し出すと遠藤の小さな手が慣れた仕草で受け取った。
「ありがと」
小さな声が甘やかにナミダの耳をくすぐる。
純黒の瞳とぶつかれば、自然、口許が綻んでくる。
こんなんだから、デレデレしてると凪人にからかわれるのだろう。
古本市に行った日、遠藤を家まで送ってから、凪人と2人の帰り道でのことだ。
「ナミダさぁ」
「なに」
「遠藤さんにデレデレしすぎ」
身に覚えのない言葉に、一瞬フリーズしてしまった。