小さなきみ【短】
先輩と同じ委員会だった友達の情報によると、先輩はずっと県外の大学を目指していたらしい。


そんな事すら知らなかったあたしは、今日まで挨拶すら出来ずにいた。


三年生が登校して来るのは、きっともう数える程だろう。


せめてメールアドレスくらい訊けるような仲なら、これからも何とか繋がっていられたのかもしれない。


だけど…


先輩が卒業する事をわかっていながら、あたしは今日まで行動に移せずにいた。


自業自得、だよね……


出来る事は、きっとたくさんあった。


それでも緊張のあまり行動に移せなかったのは、自分自身。


後悔に押し潰されそうになっていると、部屋のドアをカリカリと引っ掻くような音が聞こえた。


「アンッ!」


「チビ……」


グスグスと鼻を啜りながら、誰かに傍にいて欲しくてドアを開ける。


すると、部屋に入って来たチビは、ラグの上に腰を下ろしたあたしの傍に寄り添うように丸まった。


まるで、あたしを優しく慰めるように。


< 4 / 8 >

この作品をシェア

pagetop