日陰より愛を


「今までは女優を起用していたのに……。クライアントは何も言ってこなかったんですか」


「おー、それがあちらさんも大喜びで! ぜひとも長谷川亮介をって言ってきたらしい」


「そう、ですか……」


私はその場で崩れそうになる体をなんとか持ちこたえた。


そりゃ、人気のタレントを使うことをためらう理由はないだろう。


私だって普段だったら泣いて喜んだはずだ。


しかし、今回は現実を受け入れられそうになかった。


……でも、これは仕事だ。


それに、こうなることを望んだのも、選んだのも私自身だ。


大丈夫、私は諦められる。


「あ、そうだ。明日俺とお前で挨拶に行くからよろしくー」



――――大丈夫だろうか。


冷や汗が一つ、背中をつたった。




< 24 / 67 >

この作品をシェア

pagetop