私は最強ビンボー女!
ただ、上手くいかないのだ。


朝霧葵であるが故に。



邪魔をする。


彼女の不器用さが、プライドが。

"朝霧家当主"という肩書きが。





「のぅ、朔。今日はおそらく、記念日になるであろうな。」


「えぇ。なるでしょうね。」


今日は何かの記念日になる。

何かは分からぬが。




「・・・・・・葉月のことは、頼むぞ。」


唐突に彼女は言った。

真っ直ぐに、俺を見据えて。



「あたしは、葉月のことが何よりも気にかかるのよ。」

真一文字に唇を結んだ彼女。


俺は、静かに頷いた。


「お任せください。

愛しております。ご心配は無用でございます。

・・・・・・葉月には伝わらないでしょうが。」


小さく付け足せば、彼女はケラケラと笑った。



俺も苦笑しながら、思う。


もうすぐ、"事"は起こるだろう――そんな予感がする。





―朔side end―
< 457 / 836 >

この作品をシェア

pagetop