私は最強ビンボー女!
そして―――





「・・・・・・トイレ、行って来ます・・・。」


スッと目を伏せて、ドアの方へと早足に歩を進めた。



かすかに見えた横顔。

ぎゅっと噛み締められている唇に、胸が詰まった。



何かを考えるより先に、言葉が口をついて出た。



「葉月、嬉しいだろ。」


ピタリ

ドアのすぐ前で葉月が立ち止まってこっちを振り返った。




信じられない、といような顔。


だけどさ葉月。

笑えないんなら。
そんなに、辛そうなら。


“伝えない”っていうその選択が間違ってないって、断言できないんじゃない?





恋がどういうものかなんて知らない。

葉月の“好き”なんて分かんない。


だけど、私は――





「ちょっとは素直になってもいいと思うけど?」



葉月には、そんな顔してほしくないんだよ。




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