潜入!婚活パーティー☆①

④ピアノの調律師

『ハナちゃん、食べ放題に来たわけじゃないのよ』


僧侶と別れてから、軽くお説教です。

たしかに、4,000円分食べて帰りたい気持ちはわかる。
でも、ここは貴重な出会いの場。


『だれか、話してみたい人はいないの?』


ハナちゃんは会場をぐるりと眺めました。
披露宴会場のように置かれたテーブルそれぞれに、食べ物やら飲み物やら。


スイーツが可愛く陳列されたテーブルの向こう側にいた、コジャレた男性を指差したハナちゃん。


『あのアシメヘアの人?』

黙って頷くハナちゃんに、なんとかしなこればと拳を握ったウキタ。

『よっしゃ! まかせとけ』


ビールで気分が上がったウキタは、すっかり気が大きくなっていました。

グラスに残ったビールを飲み干して、コジャレたアシメのもとへ。


ハナちゃんの方を示しながら、男性の反応をみる。


あ、ハナちゃん、顔はかわいいんです。
ちょっと体がふくよかなんです。


『… デカイな』

小さな声で呟いたのを、ウキタは聞き逃しません。


『ちょうどいいですよ!』

何が? いや、咄嗟に出た言葉ですから。

苦笑するアシメをハナちゃんの元に誘導。
さぁ、行け ハナちゃん!!


しかし、例によってハナちゃんは俯いてモジモジする。


アシメが気を効かせて話題をふってくれて、なんとか会話成立。


しかし、だんだんウキタ寄りになるハナちゃん。
言葉も少なくなる。


そして、アシメがドリンクを取りに行ったところでウキタに耳打ち。

『仕事、何してるか聞いて』


自分で聞きなさいよ(´д`|||)
まあ、取材だと思って聞いときますか。

ピアノの調律師をしているとのことで、すかさずウキタが

『ハナちゃんもピアノ習ってたのよね!』

と話をふったところ、

『もう全部忘れちゃったけどね』

ハナちゃんってば(*`Д´)ノ!!!

ウキタ、撃沈であります。



《ウキタの取材メモ》

*ピアニストを目指していた
*親子二代で楽器屋さん
*指が綺麗だと思ったらジェルネイルを施してあった。職業柄、指先を酷使するので爪が割れてしまうそう。


小説で読むならピアニストよりも、調律師のほうがリアルな感じかも、と思いました。
華が無く、盛り上がらない話を書くのが趣味なのです。
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