そして 君は 恋に落ちた。


定時に帰る人が少ないのか、エレベーターは一階までストレートに下りた。

そして、到着音と共にドアが開く。



エレベーターから降りて出口まで向かう中、いつものように受付から挨拶を受ける。



「お疲れ様でした」


深々と頭を下げる彼女たちを視界に入れ、

「……お疲れ様でした」

そう返事を返した私は気付いてしまった。


彼女がいない事に。




でもそんなのどうでもいいし。
今日は何食べようかな。

そうやって、囚われそうになる思考を呼び戻す。






野菜がまだ冷蔵庫に沢山あるから鍋も良いかもしれない。

最近増えたCMを思い出し、今日の献立を決めた。が、何故だろう。

視界に入れたくない事ほど気付いてしまうのは。




下りた駅の改札口。

人混みの中見つけてしまった姿に、足は自然に止まった。



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