そして 君は 恋に落ちた。





―――喉が渇く。


……何でまたこの場所にいるの?




もう、二度と来ないと思った。彼と彼女の家に……。


彼女と二人で使っているだろうベッドで私を抱いて。

私を後ろから抱きしめて、離さなくて……



『……可愛い……』



掠れた声で囁いた彼の言葉なんて―――

そんなの、思い出したくもない。






「……ダメ………帰る……」



振り絞って出て来た、やっとの抵抗の言葉。


彼はドアにもたれるように開けたまま。



「―――か、える……」



震える声に、今まで動かなかった彼が、動いた。



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