...Melting Love...―愛檻―


そう言って少し笑う二楷堂を、じっと見上げる。
別に、振った人数をはぐらかされたからじゃない。

二楷堂が、遠くにいる男子の会話が聞こえたとか言うからだ。
だって、20メートルも先でコソコソ話してる男子の会話が聞こえるなんて、おかしい。

私には聞こえていたけど、私は“特別”だから。
自分の聴力が、“耳がいい”なんていうレベルじゃないのは、私自身よく分かってる。

聴覚、嗅覚は、多分、人間の数倍はあると思う。
感覚とか第六感みたいなモノに関しても、人間より鋭い。

整った顔と、惑わせるような独特の雰囲気は、人間の中に混じれば嫌でも目立つほど。

それら、恵まれた容姿や優れた能力すべては、私がうぬぼれてるわけじゃなくて、ヴァンパイアなら当たり前の事。
―――そう。“ヴァンパイア”なら。

「二楷堂って、ずいぶん耳がいいよね」

“人間”の二楷堂が私と同じ聴力を持つのはおかしい。
そう思って聞くと、二楷堂はニコっと笑う。



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