マーブル色の太陽


「相田くん!」


江口さんが走り込んでくる。

僕の隣まで来ると、涙を流していることに驚き、そして、琢磨を睨みつけた。


「先生! 相田くんに何したんですか!?」

「あ、いや、飯食ってただけだが……」

「嘘! な、泣いてるじゃないですか!」


江口さんは、切れ長の目に涙を浮かべながら、琢磨にそう言った。

こんな江口さんを見るのも初めてだ。

琢磨も江口さんのその剣幕に押され、口の横にごはんつぶをつけたまま、慌てている。

僕はそんな二人を見ていた。

暖かい空気が自分の中からこみ上げてくるのを感じる。

そして、いつの間にか、僕の声は笑い声になっていた。



僕の説明により、誤解が解ける。

江口さんは恥ずかしそうに琢磨に謝り、琢磨もなぜか恥ずかしそうに「うむ」と言い、机の上を片付けている。

そして、来た時と同じようにビニール袋を携えると、教室を出て行こうとしていた。
< 589 / 672 >

この作品をシェア

pagetop