俺様ヤンキーに初恋を捧ぐ
8.それぞれの道
それから私は、聾学校に正式に入学をした。

手話はまだ完璧じゃない。だから一からまたちゃんと覚える。

手話を覚えながら、色んな授業もした。

数学・国語・理科・社会・英語・パソコン・・・・

何も聞こえない世界、私はただただ虚しさだけだった。

他の生徒たちは、生まれつき耳が聞こえないとか、

病気で小さい時に聞こえなくなったとかで、生きている半分以上が、

音のない生活をしてきた。だから、虚しさなんてない。

みんな口をそろえて言う。


そりゃあ、音楽を聞けない事は、寂しく思う事もあると言っていたけど。


学校が終わり、私は正門の所で友達と話しをしながら、

帰ろうとしていた。

『…あの、カッコいい男子、知ってる子?』

友達の一人が、私に手話で尋ねた。

…私はパッと振り返る。



「・・・久しぶり」

そう言って微笑んだのは。


『…雷君』

・・・そう、あの日以来会っていなかった雷君だった。

私は友達と別れ、雷君と下校する。
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