ある人々の恋愛
 名無しのひとへ
 インフルエンザは、絶対安静です。看病も来なくて結構です。イフルエンザを移されても迷惑ですから。
 私の手紙を何度も見ているなんて、気味悪いです。私があなたのことをなんとも思っていないと分かっているなら、手紙を送らないでください。私を心配する前に、まず先に自分の心配をしてください。
 あなたは私の何を知っているのですか。私の自宅を知っている。顔を知っている。ただそれだけじゃないですか。ナノに、なぜ私を愛していると言えるんですか。
 愛って、そんなに軽々しく言える言葉なんですが。今までも他の女性にもそういってきたんですか。
手紙を読むたび、書くたび、私はあなたを知りたいと思い始めている自分に、絶望します。
 私はあなたの手紙を読みたくない、返事を書きたくない。もう嫌なんです。
P.S 今回でこの手紙は終わりにします

 愛しい君へ
 君を大変傷つけてしまったことを、どう謝罪すれば言いか言葉が見つからない。でも君からの最後のメッセージの部分が、にじんでいたんだ。ぼくは君が涙を流すなんて思わなかった。だって君はいつもあのまぶしい太陽のように、果敢にもぼくとの手紙のやり取りをしていたから。
 にじんだ手紙を読んでいるうちに、自分の心にもまるで雨が降ってくるように涙が出てくる。手紙を書かないことが君のためになることは、最初から分かっていた。でもその決断をするのに、ぼくはできなかった。できないのではなく、したくなかった。
 君とのつながりを消したくなかった。君を傷つけると分かっていても、つながっていたかった。
 愛している。この言葉に、うそ偽りはない。だから今度こそは君に言おう。手紙じゃなく、君に言葉で伝えよう。
P.S 今週末土曜日に、君と出会った公園の君の指定席で待っている。いつまでも待っている。

「愛しい君へ」完
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