真夏の残骸

恥ずかしくなって黙り込むと、錐乃くんが意地悪な笑いを浮かべてわたしの顔を覗き込んだ。


「あーあ、でも蓮崎くんだなんて呼ばれて気付いてくれなかったときは悲しかったなー」

「う、うぐぐっ……だって錐乃くんの苗字知らなかったし…」

「ちかにはその“埋め合わせ”してもらわなきゃね?」


ふふふ、と意地悪な笑みを浮かべる錐乃くんをきっと睨み付けて、それから笑った。

そんなのいくらだって埋め合わせするよ。


でも、―――ねえねえ、錐乃くん。


せっかくの夏休みだから。

花火にお祭りに海に……たくさんしたいことあるよ。

全部叶えてくれるよね?

錐乃くんには10年分の埋め合わせしてもわらなくちゃ。

もちろん秋も冬も春も、ずっと一緒に過ごそうね。
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