ウシロスガタ 【完】
眼をつぶると、走馬灯のように冷夏と出逢った日から全てが蘇ってきていた。



初めて逢った時、俺の心は冷夏という女に奪われた。




不思議な女だった。




全然、心が読めない奴で



誰も寄せ付けないような大きな壁があった。




なのに、惹かれていくんだ



引き込まれるように……。




冷夏に出逢って俺は、色んな気持ちを教えて貰ったんだ。



人を好きになるってことの素晴らしさ、



そして辛さを……。




だけど、冷夏の気持ちが俺にあるって分かった時は




もう、なにもいらない



なにも贅沢なんて言わない




そう思っていた……。





思っていたはずなのに……




冷夏の笑顔が大好きで、その隣にいるだけで俺はドキドキして幸せだった。



その反面、いつも苦しかった



辛かった……。




時間というものに脅えながら



いつも旦那の元に帰って行く冷夏を、


他の男の相手をしに行く冷夏を、




いつも引きとめたくて、何度さらってしまおうと思ったか、



犯罪者になってもいいと思ったか分からないくらいで……




そんな俺の立場の気持ちが冷夏に分かって貰えないことに、いつもメールで思いをぶつけていた。





傷ついているのも、


辛い思いしているのも、苦しんでるのも、俺だけじゃないのに……。





俺は冷夏の気持ちをなに1つ分かってやることが出来なかった。




眼を開けると、俺は真っ暗な部屋にいた。



鮮明に色々思いだされることがあったのに、最後に俺の頭の中に浮かんできた冷夏は




とても悲しい顔をしていた……
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