ウシロスガタ 【完】
「よし!!」


俺は、出来あがったものを手に取ると、ひとりでにやついていた。



小さい幸せを大きな幸せに……



冷夏に教わった、大切なこと。





「やっべぇ~もう1時か!」


部屋の時計を見るなり、慌ててお風呂に直行した。



“冷夏の帰りを久々に待たなきゃ”



いつもは長風呂の俺が慌てて体を洗い、浴槽に飛び込んだ。



ひとり浮かれていた……



なぜだか、いつも冷夏の仕事が終わるのを待つ時間はとても長いもので、俺を不安におとすものなのに



今日は今までにないくらい時間が過ぎるのが早かった。



バスタオルで髪をざつに拭き、部屋に戻るとその光景に俺は息をのんだ。



「親父っ!なにを……」



そこには、俺の携帯を手に取りにやついてる親父……



「翔、電話だぞ」



親父の手の上でピンクの蛍が激しく点滅している。



「それ、電話だろ?」



慌てて奪い取り、携帯を開くと俺の目に“冷夏”の文字が飛び込んできた。



親父が目の前で目を輝かしているのを横目で見ながら、俺はすかさず通話ボタンを押した。



「もしもし?」


そこには、元気な冷夏の声が飛び込んできて、同じ空間に親父がいることを一瞬だけ忘れて俺も、テンションの上がり、自分の顔が緩んでいくのが分かった。


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