【完】るーむしぇあ。
嫌いって東条路先輩のことが?

そんなにしゃべってるところ見たことなかったけど嫌いなんだ?


「東条路さんがっていうわけじゃない」


「意味わかんないんだけど」


彼はコーヒーをひと口飲んで、一瞬だけ迷ったような表情を見せる。

だけどすぐにいつもの表情で私の目をまっすぐに見つめた。


「金持ちが嫌いなだけ」


は……?



いつも冷静沈着、理路整然の彼が大まじめな顔で謎の言葉を発した。


彼がそれ以上、理由も何も語らず、コーヒーを持って部屋に戻ってしまった後も、消化不良を起こした私はしばらくそのドアを見つめるだけだった。
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