響〜HIBIKI〜
「かな、電話よ」


ピアノ教室から、帰ってくるなり電話だった。


「はぁ〜い。誰から?」


「東京からだけど」


「東京?」


受話器を受け取る。


「もしもし…、あ、はい…、お疲れ様でした。はい、はい…、え?東京にですか?…はい、分かりました。また連絡します」



花奏は、あまり浮かない表情で受話器を置いた。


「何の電話だったの?」


「東京に来てほしいって」


「東京?あぁ、この前の撮影のことで?」


「うん、多分」


「いつ、行くの?」


「近いうちにって言われたけど…」


花奏の表情からするとあまり乗り気ではなさそうだ。


「嫌なら、やめておきなさい。でも、ひょっとしてTAKAHIROさんに会えるかもしれないじゃない?」


「行かない」


花奏は、固い表情でそう言うとさっさと自分の部屋へと戻っていった。
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