響〜HIBIKI〜
TAKAHIROは、ステージに戻ると花奏をさがした。


すぐに分かった。


TAKAHIROと花奏の目が合った瞬間、一瞬、時が止まったような気がした。


そして、スローモーションのようにTAKAHIROの動く姿が見えた。


お互い、何年も何年も離れ離れでいたかのように衝撃的に感じた。


花奏は涙で前が見えない程になり、思わずうつむいてしまった。


そして、花奏の頭の中を色々な思いが駆け巡る。


元々、都会の生活に疲れ、島に戻ってきた自分が東京に戻ることはあり得ないと思っていた。


仕事として呼ばれても、興味はない。


仮に、東京に行ってTAKAHIROに再会出来たとしても、それ以上の発展を期待してはいけないと思っていた。


今、ここでTAKAHIROに会えたことは、嬉しい。


あの時、TAKAHIROが自分のことを思ってくれていたのも事実かもしれない。


しかし、離れ離れになれば心も自然と離れていく。


たとえ花奏が思い続けていたとしてもTAKAHIROと結ばれるとは到底思えない。


片思いでいるだけなら、今までと同じファンの一人として応援していったほうがいい。


島での出来事は、素敵な思い出として心の奥にしまっておこう。


花奏は、決心した。
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