響〜HIBIKI〜
しばしの間、花奏をしっかりと抱きしめていたTAKAHIROだが、花奏の顔を覗き込むと、


「会いたかった」


笑顔でそう言った。


花奏は、しゃくりあげながらもっと泣いた。


TAKAHIROは、そんな花奏を愛おしそうにもう一度、ぎゅっと抱きしめた。


「…TAKAHIROさん…」


「なに?」


花奏は、潤んだままの瞳でTAKAHIROを見つめた。


さっき、決心したばかりだったがTAKAHIROのぬくもりを感じて、気持ちが変わってしまったようだ。


「ゴメンね…」


「なんで、ゴメンね?」


「やっぱり、私、TAKAHIROさんが大好きだったみたい。本当は…すごくすごく会いたかったのに…」


言葉に詰まる花奏に、TAKAHIROは花奏の心の中で様々な葛藤があったのだと感じた。


「かな…、俺も、ゴメン」


「なんで、TAKAHIROさんが謝るの?」


「何もしてやれなかった」


TAKAHIROは花奏のことが好きなのに花奏の思いを尊重しているフリをして、何もしてやれないと自分に言い聞かせていた。


自分が花奏のそばにいてやれないことが一番いけない理由なのだから。


花奏は、TAKAHIROの腰に手を回してぎゅっと抱きしめた。


「かな」


「何?」


「俺も本当の気持ち言っていい?」


「うん」



そういうとTAKAHIROは、花奏を自分の正面に立たせると、


「ん、うんっ」


咳払いをして、一度姿勢を正し頭を下げながら手をさしだした。


「かな、俺と付き合って下さい」


花奏は、微笑んで、


「はい」


とその手をしっかりと握った。
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