牙龍 私を助けた不良 下
叫ぶ、君への涙



* * * * *






当時の名残が全く感じられない少女が紡ぐ過去に、少年は何も言うことが出来なかった。



「──あの日のこと、今でもよく夢に見るんだ」



そんな少年を他所に、幾ばくか放心したような声色で少女は続けた。



「3年前のクリスマス、桃華が拐われ、戒希は刺されて重傷を負った」



溜まり場にいた彼女と幹部の青年・ひなた、それから狼王のメンバーは、二人の護衛に就いていたメンバーからの連絡でその事を聞いた。


少女は一瞬にして、頭にカッと血がのぼって・・・すぐに、制止の声を振り切って、桃華の捕まった場所へバイクを飛ばした。


そして、乱戦が始まって、狼王メンバーも加わり辺りは喧騒に包まれた。


だが、そんな時に悲劇は起こった。拐った側の暴走族の総長が、狼王側の主戦力となっていた少女に向かって銃の引き金を引いた。


そして、無慈悲な銃弾は少女を撃ち抜くかに思われたが──・・・。



「──射たれたのは、私を庇ったひなただった」



逸早く銃に気付いたひなたは、無防備な少女に覆い被さった瞬間に、射たれてしまった。



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