私は彼に愛されているらしい2
部内1、2を争うほどのイケメンは、つい先日とてもとても綺麗な年上のお姉さまと結婚したばかりだ。そのお相手というのが関連部署の人で、有紗も入社当時に関わったことがある美人だった。

新入社員の他部署員であった有紗にもよくしてくれた頼りがいのある優しい先輩だ、以来彼女との親交は細々とだが続いていたのだが結婚相手を知って驚いた。

なんと職場先輩である腹黒王子だったなんて。

「ありがとうございます。」

さっそく袋の中身を確認するといつものように手作りのお菓子が入っていた。

「わー!美味しそう!!いつもありがとうございます!」

「時間を有意義に使ってるよねー。持田さんが太ってないか心配してたよ。」

「退職されてから週一ペースでお菓子作ってくれますもんね。私はラッキーです。」

いつもありがとうねと申し訳なさそうにする君塚に有紗は手をひらひらさせて微笑んだ。その言葉に偽りはなく、すっかり趣味となった君塚夫人の作るお菓子は本当に美味しいのだ。

「猫がパンダになったくらいって言っとくねー。」

「じゃあ君塚さんと違ってお腹が白いから安心ですね!本当、奥様はこの腹黒さなんとも思わないんですか!?」

「またまたー、持田さんには負けちゃうよー。」

「私は純真無垢な真っ白けです!」

恒例のような朝のからかいを終えて笑顔で受け取ったはいいが、忘れかけていた出来事を思い出して有紗の心は一気に沈んだ。

そうだ、ここにも結婚のネタが転がっていた。

イケメンが結婚したばかりの時期はお前の結婚はいつなのだと話題にされて暫くいじられ続けたことを大輔に愚痴っていたのに、そんなことも思い出して何とも言えない気持ちになる。

嫌なことを思い出した有紗はそれが素直に表情に出ていたらしい。

「持田さん、シワ。眉間にシワ寄ってる。」

「おっと。」

君塚に言われ慌てて眉間に手を当てた。

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