私は彼に愛されているらしい2

5.白紙に戻そう

「この前行ったレストランに行きたい。」

そう連絡入れたのは有紗からだった。

西島たちと向き合って勇気と自信を持った有紗はその日の内に大輔へのアクションを起こす。

とはいえ、多少の臆病さが抜け切れずに電話をすることは出来なかった。

小心者の手段としては有難いメールを送ったのだ。

送信ボタンを押す指は震えていた、送った後のやめておけばよかったという後悔も半端なかった。

送信後1分も満たない間に何回受信確認をしただろう。

今までだって大輔のレスポンスが良かったことは一度も無かった、でも今日に限ってすぐに返事があるような気がして落ち着かない。

「来てない。」

当たり前だ、送信されてからまだ2分と経っていなかった。

有紗だってこんなに早く返すことは滅多にない、それを分かっていても落ち着かないのだ。

平日の夜はお互いに遅くまで働いている、メールを見たとしても返事は後回しにして目の前にある仕事に集中するのが当たり前だ。

だから返事が遅いことに苛立つようなことは無い、むしろ送ったことで自己完結しているから興味も無かった。

緊急であれば電話をするというスタイルをとっていたからだ。

案外返事は明日にならないとこないかもしれない、それも仕方がないことだ。

待つ方としては早く反応が欲しいところだが今まで自分が放ったらかしにしていた分、どう考えても強く言えなかった。

時計を見てもまだ5分と経っていない。

「駄目だ、お風呂入ってこよう。」

もし返事が電話だったとしても今の有紗に出る勇気はないからいいだろう、むしろお風呂に入っていたという理由があった方が好都合だったりするのだ。

罪悪感に苛まれずに済むから。

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