私は彼に愛されているらしい2
疲れた。しかし一歩進めた、その事実が有紗の中では大きな意味を成す。

約束の日までは何も考えずにまた集中して働こう、やることは山ほどあるのだ。頭の中でこれからの予定を整理しながら有紗はいつの間にか眠ってしまっていた。

逃げていたことから1つ向き合えば自分の中に自信が生まれる。

相変わらず好奇な視線を受けたり身に覚えのない噂が聞こえてくるがそんなものを相手にする必要はないと切り捨てた。

所詮は他人の悪趣味な話だ、そこに落ちないように自分の位置を高くしようと背筋を伸ばして胸を張る。

気にした方が負けなのだと涼しい顔をすることが有紗の新しい戦い方になった。

「もっちー、ちょっと売店寄っていい?」

「はい。分かりました。」

沢渡と共に行動することが多くなった今、こうして2人で寄り道することもいくらか増えてきたのは確か。

「それ買うの?奢ったげるよ。」

「いえ、そんな。」

「いつも頑張ってるからご褒美。年上はたてるもんだよ?」

「じゃあ…ご馳走になります。」

有紗の分の会計を沢渡がするところも見られたりと噂はより具体的に進化していることも西島からの情報で分かっていた。

あれ以来の西島の態度は少し開き直ったものに変わっている。有紗はそれが少し嬉しかった。

そうして終わっていった平日、カレンダーに書かれた時間を見つめて有紗は震える息を吐く。

「明日だ。」

いつ以来に会うのだろう、そんなことを思うのは前ではよくあったことだがここまで緊張したことは無い。

訪れた約束の日の朝はいつもより入念に身支度を整えた。

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