私は彼に愛されているらしい2
「ちょっと、暗いって。迷走してない?いま大事なのは彼と向き合うことでその先なんかどうでもいいのよ?」

「でも舞さんがー。」

「あのね、仕事なんてどうとでも出来んの。子供だって授かりものなんだから、とにかく今考えることじゃない訳。」

またペチンと舞の手が有紗の頭を弾く。

「これから容赦なくラブ攻撃がくるんでしょ?そんなこと考えてる暇あんの?」

ニヤリと嬉しそうに笑う舞からはちょっとした悪意を感じて有紗は目を細めた。

楽しんでいる、間違いなく彼女は有紗が悩みほろほろとしている姿を楽しみにしている。それを分かっているようでみちるは含み笑いをしたまま視線を宙へと逃がしていた。

「…報告なんてしませんよ。」

「いいよ~?どうせすぐに言いたくなってくるんだから。」

歌うような感じで舞はご機嫌に体を揺らす。それは全て見通した余裕さを感じさせて有紗は口をへの字にして黙った。

悔しいけど。悔しいけど、舞の言うとおりだ。

有紗は絶対に一人で抱えきれないし、黙っていられずにいつも舞やみちるに話して聞いてもらっている。きっと今回もそうなるに違いない。

というか今回ほど話さずにはいられない内容があるのかって話だ。

あの大輔から漂ってくる空気、局地的なフェロモンの放出技は一体なんだとかわせる自信がない。何を掴んでいるのかまっすぐ有紗めがけて放たれてくるのだ。

「このパターンから見てさ、大輔くんからのメールって今日あたり来るんじゃない?」

「それでまた誘われて~?」

「予定があいていたら有紗はついうっかりオッケーの返事をしちゃう。」

「よね。多分そうなる。」

みちるからの切り出しに舞が悪乗りして更にみちるも付け足す。2人の予想は大方当たりそうで怖くなった。

断るにしても理由がない有紗はこれ以上押されるのが怖くて了承の返事をしてしまうに違いない。そう思うだけで有紗の表情が半べそになってきた。

追い打ちをかけるようにみちるが口角を上げる。

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