ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
 大小のビルや家々が電車の通り道を囲み、ふぞろいなブロックのように個性溢れる趣で立ち並ぶ。
夕焼けが半熟卵のように、ゆらりゆらりと空を染めていく様子は、懐かしいようで、どこか寂しいようであった。
 どんな土地にいても、場所にいても変わらない景色はあるのだと思うと、安心する。
 サークルの卒業した先輩が、昔の話をしてくれたのを、ふと思い出した。父親の転勤でよく転校し、友達ができず寂しい思いをしていた。そんな時に夕焼けを見上げ、慰められたそうだ。
『夕焼けはどこにいても変わらないから、私好きなの』デジカメを構えて、夕焼けの写真を撮る先輩の姿が見えた。
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