ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
 だから、優しく私に寄り添う男の要求には何でも応じた。もう捨てられないために。
 子どもができたことを告げた日から、男との幸せな時間が崩壊していった。最初は喜んで、名前をつけてくれた。
やがて子どもが生まれて、育てていくうちに男は逃げるように家に帰らなくなった。
 最後に連絡が途絶えたのは、一年前だった。少し出かけてくると言い、それっきり糸がポツリと切れるように、いなくなった。
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