World Walker
「あっ」

りせがパックを開けて稲荷寿司を一つ摘まむのと、千春が声を上げるのはほぼ同時だった。

「ん゛?」

稲荷寿司を頬張りながら千春を見るりせ。

「あちゃー…遅かったかぁ…」

顔を顰める千春に、りせは怪訝な表情。

「何?これ食べたらまずかった?」

「えっと…」

千春が説明しようとした時だった。

「さっき久々にわらわの張った結界を破る気配があったのぅ…もうすぐ『狐の嫁入り』が降るやもしれん」

スーパーの入り口辺りからそんな声。

りせと千春が思わず振り向くと、しゃなりしゃなり、と。

白いセーターと同色のロングスカート、長い黒髪、細面のスラリとした女性が店内に入ってきた。

「千春、稲荷寿司じゃ、わらわに稲荷寿司を食わせてたもれ」

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