World Walker
返せ、と言われても…。

1パック4つ入りの稲荷寿司は、もう3つは食べてしまったし、残り1つも半分は食べかけの状態だ。

困惑するりせ。

「それにお前!」

姫羅木はりせを指差す。

「昨夜の折には気付かなんだが、何やら『人間ではない』気配がするではないか。さてはわらわの結界を破って狐の嫁入りをもたらしたのはお前かっ?」

「えっ?」

そういえばこのスーパーを訪れる直前に、何かビリッと痺れるような感覚があったのを、りせは思い出す。

あれこそが姫羅木の張っていた結界。

姫羅木はこの冬城町を中心とした山々に結界を張り巡らせており、これを破って縄張りに余所者が侵入した場合は『狐の嫁入り』が降って、侵入者を姫羅木に知らせるようにしているのだ。

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