あの時も、これからも
「はあ、はあ」

病院からダッシュ

今ではすっかり住み慣れた海斗のマンションの前で息を整える

カバンからカードキーを取り出し、暗証番号を打ち込む

すっと開いた自動ドアを半ば意を決したように進む

目指すは7階

メールを何度も読み返す

読み返しても短くてそこに込められた意味をくみ取ることなんてできないのだけれど

どう考えてもこれは日本から送っている

しかもすでにこのマンションにいる

でも、海斗から送られてきた帰国の日は明日だ

明日の午前中に着くって、だから休みを取ったのに

もし海斗がいたらうれしい、けれどだったらなんで明日着くなんてメールしたんだ

とよくわからない感情が行ったり来たりする

3,4,5とエレベーターは順調に上がっていく

チンっと機械的な音がして扉が開く

カツカツ、ヒールの音が響く廊下を進んでいくとある「黒崎」と書かれた部屋

いつものならドアの横にある機械にカードを通すけど、もし、もし本当に海斗がここにいるならきっとそのドアはあいている

そう思って、そっとドアに手をかける

ゆっくりと引くと思った通り、ドアはガチャット音を立てて開いた

「…っ」

うそでしょ?

まさかの事態に息をのむ
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