スイートペットライフ
20. 仕掛けられた落とし穴
年末はどこの会社も忙しいと思うが税理士事務所も同じで、フロア全体がどこかざわついて落ち着きのない十二月を迎えていた。
私はというとまだうだうだとあのマンションで過ごしていた。

楓さんと奥さんの話を聞いた後あのマンションから出て行きづらくなった。ますます諦めが悪くなったというのが正しいんだろうけど。

今日は大倉建設の系列の会社がそろう年末の全体会議らしく諏訪君いわく権力争いが渦巻く魑魅魍魎とした会議らしい。

私は資料の作成は連日遅くまで残業して仕上げた。

その日は前日の残業がたたってか、いつもよりもゆっくり出勤した私に照井マミが近寄ってくる。

学習能力から思わず構えるが、相手はいたって普通に話しかけて来て思わずひるむ。

「これさっき諏訪先生から連絡があって、今日の会議の資料昨晩修正が入って修正完了しているから青木さんに届けて欲しいと伝言を受けました」

そう言って私にすでにホッチキスで止められた資料が渡される。

「この資料どこで?」

「諏訪先生に聞きました。これ持って大倉建設まで行ってください」

行き先が記載してあるホワイトボードを確認すると今日は関与先に直行しているらしい。

時計を見ると先日聞いていた会議が始まるまでほとんど時間がなかった。佐和子先輩に理由を告げて、照井マミが作ってくれた資料を持って急いで会議が行われる大倉建設に向かった。

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