スイートペットライフ
「で、用事ってそれだけですか?」

私が腕の中で顔をあげて大倉さんに聞くと「はっ」として急に真顔になった。

真剣な顔してどうしたの?

「この記事見て」

そう言って再度指差したのはアイドルが掲載されている次のページだ。

掲載されている見出しを見るとそこには【今日は特別!大好きな彼に私から……】と大きく書かれていた。

「ちゃんと読んでよっ!」

ぐいっと雑誌を突き付けられて、内容を確認すると「今日は自分から誘ってみよう」とか「たまには寝室以外でも」とか佐和子先輩にこの雑誌をもらったことを激しく後悔する様な内容で……。

「よ、世の中のカップルは大変なんですねぇ」

視線を合わさずに何とか感想を述べてみたけれどそんなことで彼が納得するはずもなく。

「大変ですねぇじゃないよ。僕たちだって世の中のカップルなのに」

不服そうに唇を尖らす。

「で、でもここに書いてあるようなこといつもオミ君してくるじゃないですか!」

恥ずかしいのを我慢してここぞとばかりに抗議する。

「でも嫌じゃないでしょ?気持ちいいでしょ?」

覗きこまれて「ね?ね?」と聞かれる。

確かに否定はできない。彼は私が初恋だとは言ったけれどあっちのほうは、もうベテランで(佐和子先輩に相談したら、「“いい”んだったら良いじゃない」と良く分からない答えが返ってきて以来、もう深く考えないようにしている)私は痛い思いをしたことなんてない。

「でも、だからってこれ以上他にどうすればいいんですかっ!?」

彼の意図がわからずに(これは日常的にだけど)尋ねる。

「他にってまだまだ色々あるでしょ。あ~んなこととか、こ~んなこととか」

意味ありげな視線を向けて指をからめてくる大倉さんの脳内を想像すると震えが止まらなくなるので、ここはあえて何もわからないままでいようと決めた。

「これ、これなんてどうかな。初心者のミィにぴったり」
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