無垢・Age17
 「えっ!?」
私にはその意味が解らなかった。


「ハロウィンの日の子供達の言葉掛けだよ。『お菓子をくれなきゃ悪戯するよ』って意味だ。でも今回は度が過ぎている」

アイツは監督を睨み付けながら言った。




 「ハロウィンって言うのは元々ケルト人のお祭りで、お化けの格好をして悪霊や悪魔を追い払う行事だったはずだ」

アイツの言葉を聞いて思い出した。


「ハロウィンと言うのは子供達のお祭りじゃなかった? トリックオワ何とかなんて……そんなイメージ強いんだけど?」


「確かに。でもそれを大人が恐怖に変えた。言動の自由。表現の自由と言ってしまえばそれまでだ。でも……だからと言って、何をしてもいいってことじゃない」
アイツは私を気遣いながら優しく語り掛けていた。




 「ありがとうございました」

そう言ったのは橘遥さんだった。

見ると、頻りに頭を下げていた。


「彼女に何かあったら……、私今度こそ生きては行けなかった」

橘遥さん私はその場で泣き崩れた。


(今度こそ生きて行けない? もし、私がこの人達にレイプされていたなら。橘遥さんだけじゃない。きっと私も生きては行けなかった。ありがとうございます。二人の命を救っていただきまして、ありがとうございました)

私はアイツに手を合わせた。


(あれっ!?)
その時、何故派手な水玉模様の洋服なのかがやっと解った。

私の背中にアイツのコートが掛けられていたのだ。


「貴女が悪い訳ではない。きっと、同じことをされたはずだ。でも、何故なんだ? 見れば判ると思うけど、ヘアースタイルが違うじゃないか?」


「あの時と……同じ……だった」

橘遥さんも私同様にしゃくり上げ始めた。


「あの時と同じって……、もしかしたら?」

兄貴はそう言いながら、橘遥さんの背中に手を置いていた。


「もしかしたらお前のそのウィッグ俺のためか?」

突然、兄貴が言った。

私は頷くしかなかった。


「そうか……あの時と同じだったな」

兄貴には何かが解ったようだ。


「悪いのは貴女じゃない。コイツラだ。先ほどは失礼な発言をして……」

そう言って兄貴も泣き出した。


「気にしないでください。私は大丈夫ですから」

橘遥さんはそう言いながらも、うつろな目を私に向けていた。




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