無垢・Age17
 「完成したね」
俺は言った。


出来上がった愛の鐘。
最初に鳴らしたのは橘遥さんだった。


四月一日。
エイプリルフールの日。
完成記念祝賀会が、自動車会社の入社式会場で執り行われた。

除幕式の幕の中で彼女達にはじっとしてもらっていた。

だって俺、どうしてもみさとを驚かせたいんだ。

橘遥さん達も同じ気持ちだったようだ。

だからスムーズにことは運んだんだ。




 俺とみさとが幕を引く。

その瞬間、二人の目が合って……
みさとが固まった。


呆気に取られてるなと思った瞬間、我が作戦の勝利を感じた。


『遣ると思った』
って、俺は後で口にした。
でも、本当のところは期待だった。

幕の下で、待ちきれなくてキスをしてくれれば嬉しい。
そう思っていたら、案の定遣ってくれていたからだった。

ま、用心に手を広げてがバーはしていたけどね。




 「もう、意地悪……」

案の定みさとは泣いた。
笑いながら泣いていた。


「さあ、愛の鐘を鳴らそう」

俺は笑いこけながら二人に催促した。




 俺が仕掛けたのは、橘遥さんの結婚式だったのだ。


でも一組だけでは勿体無い。

ついでに……
みさとと俺。俺の親父とみさとのお袋。
合計三組による合同結婚式にしてしまったのだった。




 でも更にサプライズは続いた。
大きなシートの下から現れたのは、写真スタジオだったのだ。


僅か二週間で作り上げたとは思えないほどしっかりした造りだった。


一番奥の部屋には、椅子だけが置いてあった。
思わず、二人は目を合わせるだろう。


『誰かに話した?』

きっと二人同時に言うに決まっている。


話した訳ではないよ。
俺の地獄耳だ。
八年前のあの日のスタジオに置いてあった物と同じだ。


俺はしてはいけないことをした。
弟から、デビュー作品を借りて見たんだ。


彼女は、ヴァージンをその椅子で奪われていた。
本当なら見るのもイヤなはずなのだと思う。

でも俺は、それを敢えて置いてみたんだ。

本当はその場所で、彼と結ばれたかって知っていたから。


もう一度……
キレイだった身体になれればいい。

でも彼女はそのままで充分キレイだった。




 『優しくしてね』
きっとそう言いながら、二人は愛し合う。


それが、俺の仕掛けた本当のサプライズだった。


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