無垢・Age17
美魔女社長のオフィス
 冬休みに入った頃、私は再び東京へと向かった。
年末の就活応援をハローワークが開催していると兄貴が情報をもたらせてくれたからだ。

就職難は全国共通のようで、この時期は特に熱心のようだ。


私は今度こそ失敗しないようにと、髪から足の爪先まで念入りに磨き上げてきた。
それほど気合いを入れて上京してきたのだった。


入り口で渡された、受付ナンバーの入った名札を胸元に付けて面接の時間を待った。

心を冷静に保ち、自分をアピールすること。
それに専念した。


会場には沢山の協賛企業がブースを設けていた。
私は午前中に出来る限り多くの会社を回ろうと思った。
午後には行きたい場所があったのだ。

それは以前正午ピッタリに始まるあの番組のスタジオのある場所だった。

この就活フェスティバルは、まだ暫くこの場所で開かれるらしいので。




 冬休みだから会場は人で溢れている。
こんなにも就職難民と呼ばれている人が居るのかと思って、少しなめてた自分に気付く。

それでも私は駅に向かい、山手線に乗り換え可能駅まで乗車した。


新宿駅で降りた頃にはもう既にお昼近くになっていた。

上を見て掲示板をチェックする。


「あれっ、ない」
私はホームで戸惑っていた。
何故だか解らない。
JR新宿駅のホームには西口へと向かう案内板が無かったのだ。
目安にしようとしていたのに……
初めて来た時には気付かなかった。

でも、確かにあると聞いていたのに西口が表示されていなかったのだ。

そこには南口ともう一つ別方向。
なんだか解らないのけどそちらには行けないと思った。

仕方なく南口の改札口方向へ歩き始めた。

私はその時失敗したと思った。
反対方向に行けば東口にたどり着いたかも知れなかったから。

でも私はどうして西口へ行きたかったのだ。

ある場所を確かめるために。


田舎者にとって、新宿駅地下街は巨大な迷路その物だった。
いや、東京全体がラビリンスだったのだ。




 本当は西口から北方面に行く予定だった。
だから南口に向かって歩き始めたのだ。

途中で引き返すことも出来た。
でも私はそのまま歩みを進めた。


西口へ向かう本当の目的、それは……
ガード下を潜り抜けて歌舞伎町に行くこと。

でも、それは出来ないことだった。
アイツに負担がかかると知っているから……




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