坂口美里とガルダスト
はちしょう

 私達の市は、いくら田舎町とはいえ、ビールが売っている場所は、合計数十件。


 すべて回らないと、50万円分もビールを買うことは出来ない。


 もちろん、学校の先生をはじめとして、知っている大人に見つかるわけにも行かない。


 作戦は、思いのほか、困難を極めた。


 それにしても、麦100%天然水使用のビールはやっぱり、他のビールに比べて高いなぁ。


「ねぇ、どうして、他のじゃいけないの?ほら・・・あっちの缶の方が安いわよ。」


 とあるスーパー。


 唐突に、カオリにそんなコトを聞かれた。


「アレは、ビールじゃなくて発泡酒。全然違うものだって、お父さんが言ってたよ。それと、これ以外のビールは、どうしても不純物が混ざって、エネルギーが出ないんだよ。」


 勝手な憶測だけど、たぶん間違いない。


 そんなコトを繰り返しながら、私たちは、スーパーはもちろん。手当たり次第の酒屋やコンビニから、同じ銘柄のビールを買いあさった。


「あの・・・お客様は未成年では?」


 等と、当然のごとく聞かれたりもしたが・・・。


「お父さんに頼まれたんです。お父さんも出不精で、買い物をこんなに可愛い兄妹に任せて・・・。いやになりますわね~。」


 等と、不思議な言い訳で逃げながら、私たちはビールを大量に買い込んでは、お父さんお母さんにばれないように、部屋に持ち込んだ。


 数えていないから良く分からないが、当然ビールは二人で10~20リットルを持つのが限界。


 途中から、自転車というとっても便利な貨物機を使いだしたが、それでも、50万円分のビールを買うのには、とても時間がかかる作業だった。


< 105 / 152 >

この作品をシェア

pagetop