かっこ仮。の世界。
清明の母である妖狐葛葉は、先の帝の執拗な執着の末、騙し打ちのような手段で捕らわれた挙句、その命を奪われ、美しい白い毛皮を剥がれた。
その毛皮は、内裏の宝物庫に奉納されたという。
清明はその毛皮の返却を何度も要請し、先帝は清明が自分に仕えることを条件に返却を約束したが、結局のところ先の帝はのらりくらりとその要請を無視し通した。
故に、清明も玉若も先帝に対する心象は最悪だった。
「まあ良い。清明が構わぬのなら妾が口を挟んだとこで、何にもならんからの」
「わかっているならいいよ。まあ、僕も母の形見さえ返してもらったら、さっさと隠居するつもりだよ」
「隠居できれば良いがの」
しっしっしっ、と酷く意地の悪い笑みを浮かべて、玉若は出てきた時同様にその姿を一瞬で消した。
残された清明は、何事もなかったように再び星読みに集中した。
けれどその胸の裡は先程とは違い、ずいぶんと乱れており、暫くして、清明は自身の動揺に星読みを諦めた。
こんな精神状態では、読み違えを引き起こすだけだ、と。