ロング・ディスタンス
 長濱が連れてきてくれたのは、運動場や庭園を併設した森林公園である。休日の行楽地とあって、辺りには家族連れやカップルが歩いている。
 到着したのはいい時間だったので、二人はまず園内にあるカフェレストランでランチを食べることにした。
 店は壁面や天井がガラス張りで、暖かい日の光が降り注いでいる。壁の向こうに木々の鮮やかな緑が見える気持ちのいい場所だ。二人は壁際の席に通された。
「いい所を知っているんですね」
「気に入ってくれてうれしいよ。この公園のこと、知ってた?」
「名前は聞いたことありましたけど、来たのは初めてです」
「そう。君はあまり外出をしないんだね」
「ええ」
 神坂と付き合っていた時は、日の高い時間帯に一緒に外へ出かけるなんてありえないことだった。デートスポットなんて場所に来ることはなかった。彼に会えない週末は、一人部屋で溜まった家事をしたり、読書をしたりしてきたものだ。
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