ロング・ディスタンス
 自分の席に着いた栞は、携帯にメールが届いたことを告げる着信音を聞いた。通勤用のカバンから携帯を取り出すと、メールボックスには神坂からのメッセージが届いていた。彼が仕事中にメールを送ってくるなんて珍しいことだ。以前だったら来るのが待ち遠しかったメールも、今はその内容を読むのが怖い。それでも思い切って開くと、そこには普段の彼らしからぬ甘い言葉が連ねられていた。

 “さっきは俺に言いたいことも言わせずに逃げてしまったね。だからメールで俺の気持ちを言わせてほしい。俺はお前が好きなんだよ。お前は俺と別れたいと言うけど、そんなこと俺は耐えられないんだよ。あの研修医なんかよりも俺の方がお前のことを想っている。これまでお前に寂しい思いをさせてしまったことは俺も悪いと思っている。もうそんな辛い思いをさせないし、不満は何でも言ってほしい。だから俺にもう一度チャンスを与えてほしいんだ。栞、せめてメールを送ってくれ。待っている。”
< 130 / 283 >

この作品をシェア

pagetop