ロング・ディスタンス
 栞は一人部屋に入れられた。

 窓際に置かれたベッドから、灰色の冬空が見える。空の色が彼女の心の模様を表している。病気のことや仕事のこと、不安なことが次から次へと頭をよぎる。病気が治って仕事に復帰できるようになるまでどれくらいかかるのだろうか。生命保険には入っているけど、それがどの程度治療費をカバーできるかも心配だ。

 入院当日は母親が付き添ってくれたけど、一人になると不安が募る。こんな時は彼の声が聞きたい。
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