ロング・ディスタンス
「でも、長濱さんはあんたが新しい赴任地へ来たいというのを拒まなかったんでしょう?」
「それは彼が優しいからだよ。『遊びにきたいなら別に来てもいいけど』みたいな感じ? 私、あの人と前みたいな関係に戻れる自信はあんまりない」
 前みたいな関係とは、栞が提案した「友達から始める関係」である。
「長濱さんと再会してからメールとかしてるの?」
「ううん。そんなの全然来ないよ。こっちもわざわざ送らないし。だから別に脈なんてないの」
「じゃあ、何であんたは遠路はるばるそんな望み薄な人に会いにいこうとするわけ?」
「私、長濱先生のことをもっと知りたい気がする。ふられても別にいいんだ。彼のことは一度ふっちゃったし、自分の過去も知られちゃったし、私なんて好かれる要素はゼロに等しいけど、いいんだ。とにかく一度彼に会って、じっくりと自分の気持ちを伝えたいの。当たって砕けたいのよ」
「そっか。じゃあ、早く元気にならないとね」
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