ロング・ディスタンス
 帰りのバスの中、栞はずっと窓の外を眺めていた。見慣れた町の風景を見ながら、心の中で来し方のことを考えていた。
 やっぱりいつまでもあんな関係を続けていてはいけないのかもしれない。人目を避けて会わなければならない恋人との、周りの人に隠さなければいけない関係なんて不毛だ。今まではそれでもいいんだと思っていたけど、今初めてそういう気持ちが芽生えてきた。
 今すぐにとはなかなかいかないけれど、やっぱりあの人とは別れた方がいいのかもしれないと思えてきた。別れるという選択肢を初めてリアルに考えた。そんな考えもあったなんて今までは気づかなかった。
 少しずつでいいから、別れる勇気を出していけばいいのかもしれない。
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