ロング・ディスタンス
「浅羽さん。あなたたちの集まりにはお医者さんはいないのかと思っていたんだけど」
「ええ。基本的には皆、看護師とかリハビリの先生方なんですけど、長濱先生だけはお医者さんでも私たちに付き合ってくださるんですよ。医者だからって偉ぶらない気さくな方なんです」
 研修医なら腰が低くてて当然ではないかと栞は思った。
「ねえ、児島さん。一緒に行きましょうよ。今度は、私と彼と児島さんと長濱先生の4人で食事会を設定したんですよ。一度会って話をして、気に入らなければ次は断ればいいじゃないですか」
「そうだけどねえ」
「ね、お願いします。彼からのたってのお願いなんです」
 泉が両手を合わせて言う。
「うーん、ちょっと考えておくわ」
 そう言って、栞は給湯室を離れた。

 新しい出会いに対して前向きになった方がいいのはわかっているけど、いま一つ気分がのらない。神坂以上に好きになれる男なんて、そうそういないのではないかと思ってしまう。彼を知った今、そこいらにいる平凡な若手職員なんて物足りなく感じてしまう。
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