鬼神姫(仮)
「あの。授業が始まりますが」
雪弥は二人に近付いて言った。すると茶髪の男が只でさえ鋭い目を更に鋭くして、サボりだ、とだけ答えた。
それに合わせてももう一人の男も頷く。こちらの校章も二年のもの。それでも弥はその顔に覚えはない。
「貴方も転校生?」
雪弥はさして目線の変わらない相手に訊いた。すると男は大きな瞳をこちらに向けてそうだ、と頷いた。
こんな田舎に二人も転校生が。
それは不自然なことにしか思えなかった。
雪弥が首を傾げたその瞬間。
鳥の羽ばたきの音が耳に届いた。大きい――否、近い。
雪弥は咄嗟に身構えた。その音は直ぐ間近に聞こえたのだ。ばさり、と一度、そして直ぐに二度。
この間隔からしてさして大きな鳥ではない。だが、鴉程度はあるだろう。
――来る。しかし此処には人が。
雪弥は腰に右手を当て、辺りを窺ったその刹那、霧が目の前を覆った。深い霧ではない。その為、視界は塞がれていない。